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時間についてもう一度考えよう

  • 著者:林 真司
  • 投稿日:2019年1月29日
  • 更新日:2020年2月5日

 最近読んで、当たり前のことに気付かされた良本について書きたい。本のタイトルは『モモ』(岩波少年文庫)。

 

 時間は誰もが知る通り、とても大切なものだ。”時は金なり”ということわざがこれだけ流布しているのは、それだけ多くの人が時間の価値に気づき、意識しているということだろう。

 

 その時間に対する考え方に一石を投じるのがこの本の醍醐味である。世間の多くの方々はどうかわからないが、少なくとも僕は、一つの事を完了させる時間はできるだけ短い方が良いと考えてしまう癖がある。本を読み終えるのは1秒でも早く、移動時間も1秒でも短く、食事をするのも1秒でも早く、買い物も1秒でも早く終わらせようとしてしまう。

 

 この本を読むまでは、このような生き方が、無駄な時間を省き、限られた時間の中で多くをこなし、結果、1日の質を高めるのに素晴らしい生き方だ、と信じて止まなかった。

 

 この本の中では、このような生き方は、”時間泥棒”と呼ばれる謎の黒幕によって作られた価値観で、多くの登場人物がこの泥棒組織によって時間を盗まれていく。ここで注目したいのは、時間を直接盗まれるというわけではなく、時間を節約することによってより良い人生を送りましょう、という謳い文句で、人を時間節約に追い込んでいく。時間を節約することと、盗まれるということは全く違うことのような気がするが、時間節約に躍起になることにより、人はより多くの時間を欲することになり、結果、時間を盗まれて時間が少なくなっている状態と同じ状況に陥ると、私は解釈している。

 

 現代の人は皆忙しい。その理由の一つに時間節約を何の疑いもなく良いこととして受け入れ、少しでも時間節約のために血眼になって日々過ごしているというのがあるかもしれない。我々は知らず知らずのうちに時間泥棒に時間節約を促され、時間がもっともっと欲しい状態に陥っている。時間を意識して、いつも自分の人生にプラスになることを考え、無駄な時間を減らすということは、もちろんそれはそれで有りの考え方だとは思う。ただ、この本を読んでしまったあとでは、その生き方に対する疑問が生まれ、時間を意識しないで生きる、本当に大切なものに時間を使う人間的な生き方にフォーカスしてみようという気になる。

 

 時間が知らないうちに盗まれている、しかも、多くの人が良いと思い込んでしまっている考えによって時間が盗まれていることに疑問を呈する異色の本。多くのビジネス書とは対照的に、自分の一番身近な大切なものに気づかせてくれる。

 

 この現代の違和感に気づき、それを小説という形で表現したこの本の著者、ミヒャエル・エンデ氏に感謝したい。なぜなら、この本によって多大な影響を受けた読者の一人が私だからだ。ぜひこのブログを読んで頂いた方にも読んでいただきたい一冊。

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プロフィール
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イチゴ農家の次男として生まれる。
明治大学卒業後、地元の地銀に入行するも、会社のカルチャーが全く肌に合わず1年で退社。退社後すぐにフィリピン留学でフィリピンのアンヘレス地方、セブ島で計約半年過ごす。
その後オーストラリアでワーキングホリデーを約半年行い、他国の桁違いの農業を初めて知る。ワーキングホリデー中にセブ島の語学学校でマネージャーをする話が決まり再度渡比。
語学学校では入社後半年足らずで急に経営者が変わることになり、またもカルチャーが合わなくなり1年半で退社。
セブ島で転職活動をし、比系大手IT会社に入社。当時付き合っていたフィリピン人の彼女(現妻)の妊娠出産がきっかけで1年で退社し、いつかは必ずやろうと思っていた農業をすることを決意し帰国。