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これは小説だが、今まで読んできたものとは一味違った。一味違う点の一つとして、主人公の多さである。通常は主人公はもちろん1人だが、この小説では主人公が4人いるのだ。著者の中では主人公は一人なのかもしれないが、少なくとも一人の読者として私がこの本から体験したことは、4つの異なる目からストーリーを追っていたということ。
この小説は、読み手に火がつくのが少し時間がかかるが、一度火がついてしまうと、ページをめくる手が止められず一気に読んでしまうほど中毒性がある。冒頭は、4人の主人公が別々に登場し、別々の場所でストーリーが平行して進んでいくため、何の話かわからなくなる。だが途中で、その別々に進んでいたはずのストーリーが一致するところがあり、ここまでくると読者は「なるほど、そういうことか」と合点がいき、その頃にはこの本に夢中になっているのである。
この主人公4人は3人の若年天才ピアニストと1人の青年サラリーマンからなる。この設定がもうすでに卑怯だ。この4人が国際ピアノコンクールに出場する話であるが、まさかの運命の再開や告白にわくわくがとまらないし、ピアノコンクールの描写、臨場感については、読者もコンクールの関係者の一人となったかのようにドキドキする瞬間が何度もやってくる。この1人の青年サラリーマンはこの小説のキーマンで、物語を面白くするスパイスだ。他の3人とは違い天才ではない彼だが、ピアノの腕は素晴らしく、天才たちと互角にやりあうのだが、やはり途中で落選してまう。またここが、著者の狙いなのかもしれないが、落選した瞬間から、なぜ彼は4人の中の1人なんだ?という疑問がつきまとって離れなくなる。落選後は基本的に天才三人の物語が中心となるのだが、最後の最後で、4人の中の1人だった理由がわかる。4人の主人公を有効に使うことによって、小説なんだけども、何かパズルを組み合わせていっているような気にもなるのがとても不思議なのである。
一点だけ少し物足りないところを挙げるとするなら、ピアノ演奏中の描写が冗長な感じを受けた。曲がわからなければ、頭の中に音楽が鳴らないので、さらに長く感じてしまう。ピアノをよく知っている方や、物語に出てくる曲をすぐに頭の中で再生することができる方には問題ないのだろうが、そうでない方は、曲をYouTubeか何かで調べながら読むのは一つの手かもしれない。ちなみに私はYouTubeで調べて曲を聴きながらながら読んだうちの一人だ。笑
全約500ページからなるものですが、時間があれば2-3日で読めてしまうと思うので、週末等にお読みになってはいかかでしょう。ググったところによると、映画化が決まっており、2019年秋に上映されるようだ。映画化されるくらいこの小説が評価されているということ。まあ何の否定もできず、そうなるよね、といったところ。極上の読書体験を是非一度。